カーボンニュートラルとは
☑温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを意味します
2020年10月、政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。
「排出を全体としてゼロ」というのは、人間の営みによる二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」 から、植林、森林管理などによる「吸収量」 を差し引いて合計を実質的にゼロにすること、つまり実質排出量ゼロを意味しています。
カーボンニュートラルの達成のためには、温室効果ガスの排出量の削減と並行して、吸収作用の保全及び強化を図る必要があります。
出典:脱炭素ポータル(環境省)
温室効果ガスとは
☑CO2(二酸化炭素)だけが温室効果ガスではありません
温室効果ガスとは、大気中に含まれるガスで、太陽によって温められ地表から放射される熱を閉じ込めて、気温を上昇させる働きがある物質の総称です。
温室効果ガスには、よく知られた二酸化炭素やメタンガスなどがありますが、それ以外にも幾つかの物質があります。
「地球温暖化対策の推進に関する法律」で定められた温室効果ガスは7つあります。
温室効果ガス | ※地球温暖化係数(GWP) | 特徴 | 用途など | |
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CO2 | 二酸化炭素 | 1 | 化石燃料の燃焼によって生成される温室効果ガス。工業化(産業革命のこと)以降、排出量を増加させてきた象徴的な温室効果ガス。 | ドライアイスや溶接など、CO2を直接利用。最近はCO2を素材や燃料として再利用する「カーボンリサイクル」が注目を浴びている。 |
CH4 | メタン | 25 | 無色透明、無臭の気体。天然ガスの主成分。稲作、家畜の腸内発酵、廃棄物の埋め立てなどでも発生する。 | 都市ガスとして利用。またC1ケミカルという、CO、CO2などの原料から化学製品を合成する、有機化学プロセスの原料となる。 |
N2O | 一酸化二窒素(亜酸化窒素) | 298 | 窒素酸化物の中で最も安定した物質。人体に及ぼす害はないが、成層圏で分解されオゾン層の破壊につながる。 | 窒素肥料、ロケットエンジンなど内燃機関の燃料のほか、麻酔剤(笑気)として用いられる。調理ではクリームの泡立てなどに使用。 |
HFCs | ハイドロフルオロカーボン類 | 1,430など | 自然界には存在せず、オゾン層への影響が小さい代替フロンとして人工的に作られた物質。強力な温室効果ガス。 | ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFCs)に代わる代替フロンとして、おもに冷媒や発泡剤、洗浄剤として利用される。 |
PFCs | パーフルオロカーボン類 | 7,390など | HFCと同様人工的に作られた物質。フッ素と炭素だけからなる化合物(フロン)。非常に強力な温室効果ガス。 | 代替フロンとして半導体基板の洗浄剤に用いられる。酸素や二酸化炭素をよく溶解する性質があり、人工血液としても利用される。 |
SF6 | 六フッ化硫黄 | 22800 | 不活性で無毒な硫黄とフッ素の無機化合物。非常に強力な温室効果ガス。 | 電気の絶縁体、半導体や液晶パネルの製造工程などに用いる。大気への放出はほぼ全て人為的なものと考えられている。 |
NF3 | 三フッ化窒素 | 17200 | 無色、有毒、無臭、不燃性、助燃性の気体。非常に強力な温室効果ガス。 | シリコンウェハーの製造など。半導体化学ではエッチングガスとして使われるため、使用量は増加傾向にある。 |
※注)地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)とは、二酸化炭素を基準にして、二酸化炭素以外のガスが地球を温暖化させる性質をどれだけ持っているかを表した値。GWPの計算については未だ世界的に統一された方法がなく、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書でも、毎回数値が異なっています。ただし、京都議定書の第5条第3項に基づき、第3回締約国会議で合意したIPCCの第2次評価報告書による地球温暖化係数を温室効果ガスの排出量の計算に用いることとなっています。
【温室効果ガスの種類別構成比】
参考資料:「カーボンニュートラル」って何ですか?(資源エネルギー庁)
もし、温室効果ガスがなければ?
気象庁によると、温室効果ガスがないとすると、地表の温度は-19℃になるとされます。
グリーン冷媒
☑グリーン冷媒はカーボンニュートラル達成へのゲームチェンジャーです
グリーン冷媒とは、自然界に存在するもので、冷媒としても使用できるCO2やNH3(アンモニア)等の「自然冷媒」のことを言います。
かつては、特定フロン※1と言われるクロロフルオロカーボン(CFC)やハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)など、塩素(クロロ基)を含むフロン類が冷媒の主役でした。
しかし、塩素を含む特定フロンはオゾン層を破壊するとされ、モントリオール議定書※2によりその製造と使用が規制されることになりました。 その代替としてハイドロフルオロカーボン類(HFCs)への転換が進められることになり、これらのフロンを代替フロン※3と言います。
ところが、HFCsなどの代替フロンは、地球温暖化係数(GWP)がCO2の数十倍から一万倍以上あり、大気中に放出されると地球温暖化をますます加速させることになる、環境への影響が無視できない強力な温室効果ガスです。 稼働中の冷凍空調機器に使われるHFCsの増加に伴い大気中への排出量も増え、その温室効果の高さから気候変動への影響が問題となってきました。
現時点で、冷凍空調機器に使用されている冷媒は、R410A(HFC-410A/GWP2090)とR32(HFC-32/GWP675)という代替フロンが主流です。容量が小さな機器は順次、R410AからR32に置き換わっています。しかし、容量の大きい機器については、許認可の関係からいまだにR410Aのまま稼働させているのが現状です。
今、冷凍空調機器業界では、次世代低GWP冷媒やグリーン冷媒などによる高効率冷凍空調技術の開発に期待が集まっています。
【温室効果ガスの種類別構成比】
出典:環境省フロン排出抑制法の概要
【グリーン冷媒・機器開発事業の動向】
出典:新たな冷媒・機器開発プロジェクトについて(経産省)
※1 特定フロン
モントリオール議定書で規制の対象とされた、CFC(クロロフルオロカーボン)及びHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)を指します。フロン排出抑制法やオゾン層保護法の解説文の中で使われている用語であり、法律用語ではありません。
※2 モントリオール議定書
モントリオール議定書とは、1987年にカナダで調印された有害化学物質に関する議定書のこと。 「オゾン層の保護」を目的としたウイーン条約にもとづきオゾン層を破壊するおそれのある物質を特定し、これらの物質の製造、消費及び貿易を規制することを定めました。
※3 代替フロン
代替フロンとは、オゾン層破壊物質としてモントリオール議定書で削減対象とされた「特定フロン」(クロロフルオロカーボン(CFC))を代替するために開発された物質のことで、水素原子を含むハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)及びハイドロフルオロカーボン(HFC)と、フルオロカーボン(FC)の構成要素である炭化水素の水素をフッ素に置き換えたパーフルオロカーボン(PFC)等があります。
SDGsとカーボンニュートラル
☑SDGsには17の達成目標があります
SDGsとは持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)の略称です。エス・ディー・ジーズと読みます。
2015年の9月25日~27日、ニューヨーク国連本部において、「国連持続可能な開発サミット」が開催され、150を超える加盟国首脳の参加のもと、その成果文書として「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。
アジェンダは、人間、地球及び繁栄のための行動計画として、宣言および目標をかかげました。
この目標が、17の目標と169のターゲットからなる「持続可能な開発目標(SDGs)」で、2030年がSDGsの目標達成期限です。
日本は2021年4月に、2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減、そしてさらに50%の高みに向けて挑戦を続けることを表明しました。
そこで、この目標を達成するための核となる政策が、再生可能エネルギーの導入を増やすこととエネルギー利用の効率化です。政府は2030年までに全発電量に占める再生可能エネルギーの割合を22%~24%程度にすることを目標としています。
【SDGsの17の目標】
出典:2030アジェンダ 国連広報センター
SDGsの17の目標のうち、直接カーボンニュートラルと関わりがあるものに、目標7『エネルギーをみんなにそしてクリーンに』があります。
この目標は、国際協力の強化や、クリーンエネルギーに関するインフラと技術の拡大などを通じ、エネルギーへのアクセス拡大と、再生可能エネルギーの使用増大を推進しようとするもので、「2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。」などのターゲットが掲げられています。
もう一つ、目標13の『気候変動に具体的な対策を』も、カーボンニュートラルと直接関係する項目で、これは、気候変動及びその影響を軽減するために今すぐ行動を起こそうというものです。
気候変動は人類にとって最大の脅威であり、その広範で未曽有の影響は、最も貧しく弱い立場にある人々に不当に重くのしかかっています。気候関連の危険や自然災害に対応できるレジリエンス(強靱性)を構築するためにも、緊急の対策が必要だと訴えています。
しかし、SDGsの17の目標は相互に何らかの関わりを持って成立するもので、それぞれ単独で成し得るものではありません。ことに、カーボンニュートラルによる温暖化対策は、SDGsのすべての目標の達成に何らかの形で関わっているといえます。
たとえば、地球温暖化による自然災害は今や誰の目にも明らかな事実となっていますが、気候変動による影響は広く農業や漁業におよび、ひいては貧困や飢餓などを誘発させる要因となります。
これらは、目標1『貧困をなくそう』や目標2『飢餓をゼロに』とつながります。
【2100年の将来予測】
出典:日本の気候変動2020(文部科学省 気象庁)
RCPとは「Representative Concentration Pathways」の頭文字をとったもので、代表的濃度経路と訳されています。
地球温暖化に関する科学の最高峰の報告書である国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次評価報告書(2014年発表)によって、これからの100年間で、どれくらい平均気温が上昇するか? RCP8.5、RCP6.0、RCP4.5、RCP2.6の4つのシナリオが提示されました。
2.6や8.5などの数字は、放射強制力という地球温暖化を引き起こす効果を表す尺度で、数値が高いほど2100 年へ至るまでの温室効果ガス排出が多いことを意味し、将来的な気温上昇量が大きくなります。
RCP2.6は厳しい温暖化対策を取った場合、RCP8.5は厳しい温暖化対策を取らなかった場合を想定したシナリオで、21世紀末の世界の年平均気温は、RCP2.6で約1.0℃、RCP8.5で約3.7℃の気温上昇が予測されています。このシナリオは、それぞれ、「2℃上昇シナリオ」、「4℃上昇シナリオ」などと言われることがあります。
出典:JCCCA第3作業部会(気候変動の緩和) IPCC 第5次評価報告書 特設ページ
かわさきSDGsパートナー
☑多摩技工は『かわさきSDGsゴールドパートナー』です
『かわさきSDGsパートナー』は、「誰一人取り残さない」持続可能な未来を目指して、川崎市と一緒にSDGsを推進していく企業・団体を川崎市が認証する制度です。 また、SDGs の達成に向けて取り組むことを意思表示(宣言)する「登録」をした企業・団体を、とくに『かわさきSDGsゴールドパートナー』と呼称しています。
現代社会においては、私たちの住まいや職場をはじめ、至るところにエアコンが設置されています。 エアコンによる消費電力も大きく、国内のオフィスビルでは、夏季ピーク時の空調用電力が全消費電力の約半数(48%)を占めるほどですから、 エアコンは節電アクションの重要なターゲットとなっています。 そして、急速に近代化が進むインドや東南アジアなど、世界的にもエアコンは増加する傾向にあります。 国際エネルギー機関(IEA)は、2050年までにエアコンによる電力需要は3倍に増加すると予測しています。
エアコンの他にも、さらに大きな電力を必要とする冷蔵・冷凍設備など、今や冷熱設備は、生産や物流をはじめ、私たちが快適で健康的な生活を送るためには欠かすことができない社会インフラとなっています。 多摩技工は、エアコンや空調機器の省エネ・節電につながる事業を展開しつつ、お客様と共にカーボンニュートラルの実現に取り組んでいきたいと考えています。
気候変動のみならず、世界情勢もめまぐるしく変化するこの頃ですが、弊社は『かわさきSDGsゴールドパートナー』の一員として、冷熱設備設計施工をとおして、カーボンニュートラル、そしてSDGsの目標に向かって、これからもさらに尽力して参ります。
株式会社 多 摩 技 工
代表取締役 田中茂比古